弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2008-01-01から1年間の記事一覧

ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」

もう一度読み直そうと思って手元に置いておいたんだけど、どうにもすぐには無理なのでまたいずれということにしました。長いし、最初の方の信仰心の薄い婦人とかのぐだぐだ語りが難関でしょうが、我慢して読むと読んだ甲斐があります。 実はこの物語は、陪審…

星野博美「転がる香港に苔は生えない」

こういう、女性・ひとり・内省・自虐・感受性をもてあまして不遇、という作風はひとつのジャンルとして成立している気がするんだけど(こちらとか?)、何と呼んで括ればいいんだろう。

清永聡「気骨の判決―東條英機と闘った裁判官」

戦時中の「翼賛選挙」の選挙無効訴訟で、数々の圧力にも屈せず無効判決を出したというお話しです。というか戦争中にも、裁判も期日も転勤もあったということを、考えたこともありませんでしたが、苦労しながらも営まれていたんですね。国策や世論と司法との…

桐野夏生「東京島」

これすごい好き。毛流族! いつもながら、人の心の醜い部分や、渇望・絶望の描写がすごい。夢に出そうな嫌〜〜な感じがよかった。「人質」が無駄なところが、救いも幻想もなくてよい。

家庭裁判月報第60巻第9号 遺産分割

・永井尚子「遺産分割事件の運営について−初めて遺産分割事件を担当する裁判官のために−」 処理方法、参考文献など。 ・大阪家裁平成19年2月8日審判 被相続人(認知症)に対する身上介護による寄与分を1日8000円と評価して認めた事例です。

川島蓉子「虎屋ブランド物語」

創業480年の虎屋がブランドを維持しつつ新しさを出そうとしているということなど。ちょっと長い企業紹介パンフレットという感じで、読み物としての深さなどはないのですが、羊羹を食べたくさせる本です(このごろの朝のおめざは虎屋のミニ羊羹)。

福岡伸一「生物と無生物のあいだ」

生きているのは当たり前な前提で日々活動していますが、あらためて考えると生きていること自体がすごいという素朴なことを思います。美しい文章とみるか酔っぱらった文章とみるかはギリギリかも。 #ブラックベリーの記事にアクセスが集まってしまっているな…

判例タイムズ1269号 債務の財産分与

松谷佳樹「財産分与と債務」 債務を負担させる財産分与について検討し、結論は消極です。このほか棚村政行「離婚の際の財産分与と債務の取り扱い」相原佳子「財産分与における住宅問題」

家庭裁判月報第60巻第7号 医療ネグレクト

吉田彩「医療ネグレクト事案における親権者の職務執行停止・職務代行者選任の保全処分に関する裁判例の分析」 理論面の検討と事例6件の紹介です。

平松剛「磯崎新の「都庁」―戦後日本最大のコンペ」

「光の教会―安藤忠雄の現場」と似たような装丁ながら違う出版社、こちらの方が図版が多くお金をかけてもらっている感じです。CASAの丹下追悼号を脇に置いて参照しながら楽しく読めました。

判例タイムズ1268号 面接交渉の間接強制

東京高裁平成18年8月7日決定 「債務者は、債権者に対し、債権者が子らと月2回程度の面接をすることを許さなければならず、当事者は、その具体的日時、場所、方法について、事前に協議しなければならない」という主文について、給付条項性を否定し、間接…

阿部三郎「破産者 オウム真理教 管財人、12年の闘い」

普通の人が読んでもたいしておもしろくない本かもしれませんが、たまに難物の管財事件にあたる弁護士あたりが読むと、自分の苦労などとるに足りないものであるとかどんなに大変でも理念を持って力を尽くすべきであるとか色々思えるので良いと思います。

細野 祐二「公認会計士vs特捜検察」

国策捜査批判ものだけどこれはちょっと注意して読むべき。ずいぶんと脂っこい世界。すべてを真に受けるのはナイーブすぎる読み方だろうと思います。

判例時報2005号 麻酔ショック

札幌地裁平成19年9月26日判決 初掲載です(共同事件ですが)。泌尿器科手術の際の腰椎麻酔に関し、体位保持義務違反、麻酔高監視義務違反を認めたもの(新聞報道時にはなぜか体位保持義務違反しか紹介されなかったのですが)。麻酔薬注入の3分後に載石…

二弁フロンティア2008年8・9月合併号 ネット詐欺等

神田知宏「インターネット消費者被害の技術的構造と実践的予防策」 ワンクリック詐欺などについて画像付で事例の紹介があり、わかりやすいです。法的処理は当然わかっていても、実際のサイト構造まで見たことなかった。 あとは、岡芹健夫「就業規則について…

ボブ・ドローギン「カーブボール スパイと、嘘と、戦争を起こしたペテン師」

「イラク戦争はなぜ起きたのか。ブッシュ政権はニセの大量破壊兵器情報を信じた!」という本です。娯楽というだけでなく、事実認定や証拠評価のありかたについてふりかえる意味でもよい読み物でした。

平松剛「光の教会―安藤忠雄の現場」

あまり興味ない分野ですが、興味を持ちたくなるおもしろさです。構想を形にすることの困難さ。どう考えても、十字の腕は横までつきぬけているべきです。

村山治「市場検察」

「特捜検察vs金融権力」が良かったので。捜査方針に司法改革が影響していた?というくだりがなるほどでした。

益田ミリ「47都道府県女ひとりで行ってみよう」

なんでこんな内向きなのに一人旅なんだろう・・(楽しいの?)というのはなんで結婚しないの級の愚問なのかなあ? ちなみに私はあと18県。

ジュリスト1360号 日本人の法意識

加藤雅信「日本人の「裁判嫌い」、「調停志向」の神話と実話−『日本人の法意識』再考」 1359号に前半が掲載されています。日本人が絶対的に「裁判嫌い」であるとは言えないが、アメリカ・中国との比較でいうと「裁判嫌い」である。日本人が「調停志向」…

判例タイムズ1267号 調停運営

「奈良弁護士会と奈良地方・家庭裁判所、奈良簡易裁判所との協議会 調停の運営改善を目指して」 かなり率直なやりとりがされていて良い読み物でした。離婚調停で性急に争点の特定を求めるのではなく、ファジーさが大事であるという流れのところなど、実感と…

家庭裁判月報第60巻第6号 養育費3題

・東京高裁平成19年11月9日決定 養育費の減額を認めた原審を取り消し、減額の申立を却下した決定です。 「調停は当事者双方の話合いの結果調停委員会の関与の下で成立し、調停調書の記載は確定判決と同一の効力を有するのであるから、その内容は最大限…

家庭裁判月報第60巻第5号 控訴審からみた人事訴訟

安倍嘉人「控訴審からみた人事訴訟事件」 「控訴審からみた」は、理屈を展開するときに利用価値あり。備忘として。

読売新聞社会部「大学病院でなぜ心臓は止まったのか」

[asin:4121502035:image:small] 弁護士側の活動がよくわからないのが残念ですが、本当のことと思えないほどスリリングななりゆきです。「小さな奇跡」というくだりがありましたが、それを呼び込むためのひごろの努力なのだと思います。

川鍋一朗「タクシー王子、東京を往く。―日本交通・三代目若社長「新人ドライバー日誌」」

そこらじゅうで書評を見かける本です。おもしろいし、ためになります。お天道様がみているという境地ってあるなー、と思いました。ところでタクシーはよく使いますが言いたいことが色々あります。何より、異臭がするタクシーが多いのは何とかしてほしい! 車…

中野京子「怖い絵2」

「ガブリエル・デストレとその妹」は、ルーブルを駆けぬけ中に出くわしました。行く前に読むべきでした・・

谷川俊太郎「谷川俊太郎質問箱」

イトイ新聞のをまとめたもの。頭を休めたいときに。

西本裕隆「実体験!お笑い「刑務所生活」」

コンビニで売ってる本です。受刑者処遇法になってから初の実録本とのこと。

桜庭一樹「荒野」

一般書ぶらないでイラスト入りとかでいかにもライトノベル風にしてくれていたらこの不幸な出会いは避けられたでしょう。前半は何度も断念しようと思ったけど、後半は慣れてきたのか書き下ろし部分はそもそもラノベ臭が薄まっていたのかどうにか読み通せまし…

山田昌弘・白河桃子「「婚活」時代」

きょうび結婚するには就職活動ならぬ婚姻活動が必要というおはなし。・・とだけ聞いて腑に落ちたら、言葉だけおぼえて中身は読まなくていいかもしれません。