弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2009-01-01から1年間の記事一覧

福田恒存「人間・この劇的なるもの」

「私の幸福論」があとから効いてきて意外とよかったのでほかのを読んでみたのですが、これは…まったく合いませんでした。

イリサ・P. ベイネイデック, キャサリン・F.ブラウン「離婚しても子どもを幸せにする方法」

この分野では古典という感じでしょうか。で一応というかんじで読んでみました。が、アメリカンすぎて実用的じゃないという印象です。

判例タイムズ1293号 事実認定と判断

瀬木比呂志「ケースブック民事訴訟活動・事実認定と判断」 例に挙げられた判決でわりと大胆な部分がありおもしろかったです。主張にこたえようという意識を感じます。

ケース研究299号 家裁の内在的論理2

今号も読み応えのある論稿が多く充実していました。内在的論理というか、真ん中からのものの見方というのは、一方サイドの見方とひと味違うということが、経験してみるとわかるのです。家事調停官の任期を終えて1年半余。仮に任期を延長していても(任期は…

判例時報2036号 契約の形式と実体

名古屋高裁平成20年10月23日判決 店の雇われママで形式的には代表取締役の立場にあった者について、委任関係にあることを否定し、民法651条2項の責任を否定した判決です。委任関係じゃなかったら何だろう?となりますが、「控訴人と被控訴人は委任…

スター

日弁人権委員会の全体会に出たら思いがけず菅家さんと佐藤博史先生の会見?があり、私は佐藤博史先生をスターをみる気持ちでみつめました。先生の「刑事弁護の技術と倫理」には私はすごく感銘を受けて、取り上げられてた本をつぎつぎ読んだりしましたが(コ…

破産法素朴な疑問

旧366条の13 免責は破産債権者が破産者の保証人其の他破産者と共に債務を負担する者に対して有する権利及破産債権者の為に供したる担保に影響を及ぼさず 現253条2項 免責許可の決定は、破産債権者が破産者の保証人その他破産者と共に債務を負担する…

家庭裁判月報第61巻第5号 有責配偶者

東京高裁平成20年5月14日判決 有責配偶者である夫からの離婚請求を認容した原判決を取り消し、請求を棄却した(離婚を認めなかった)高裁決定です。 同居期間16年、別居期間15年で、子らはみな成人しています。 しかし、別居後12年にわたり婚費を…

社長がけ対策

電話を職員にかけさせて相手が出てからおもむろに自分が通話口に出る、という流儀の弁護士がいます。こういうのって何と呼ぶのかわかりませんが、幾人かの人とこのことについて情報交換したときに、ある人が「社長がけ」と呼んでいたのでとりあえずそれに倣…

桐野夏生「IN」

前情報なしで移動中に読んでて、これって「死の棘」だよねえ?とモヤモヤしてたのを、戻ってやっと確認できたのでスッキリ。すごい、すばらしい、さすが桐野です。わたし信者かもしれません。矛盾する部分もわざとに違いありません。 村上春樹「1Q84」と…

村上春樹「1Q84」

うっかり事務所履きのdanskoサボのまま出かけた名古屋への行き帰りで読みました。よかったです。ラストが放り出しすぎかもしれないけど、これくらい決着つけすぎないのがむしろいい。普通のミステリは決着つけすぎなんです。

美達大和「ドキュメント長期刑務所」

わりとお気軽っぽい刑務所リポート。楽しく読めつつも、刑務所のようすを知るのに役立ちます。内容は信頼がおけるんじゃないかと思います。

坂東元「夢の動物園」

生きものの命のことを通じて人間の命についても考えています。

外山滋比古「思考の整理学」

もっと若いうちに読みたかったみたいな帯がついてましたが(うろおぼえ。帯は捨てちゃう派です)、ほんとそんなかんじ。でもいつでも遅いってことないと思います。日頃もやもやと考えていることのエッジをなぞってもらうような読書でした。

佐々木毅訳「君主論」、塩野七生「マキアヴェッリ語録」

塩野ので抜粋で読んだのは数年前で、君主論は時代を超越してると思っていましたが、佐々木訳で通しで読むと、逆に時代の書という感じがしました。文脈の中で読むより、抜き出してしまった方が力を持つ言葉です。訳の調子としても、塩野のが引用向きです。

判例タイムズ1292号 面接交渉・面会交流

「面会交流審判例の実証的研究」 なかみは普通ですが、審判例が広く拾われているのでこの種事件を扱うときの参考に。

判例タイムズ1290号 民事裁判と当事者意識

座談会「当事者は民事裁判に何を求めるのか? 下」 これもよかったです。当事者の心理を知るという意味でこれも弁護士としては読むべき。あとは、win-win的解決ということが言われるが訴訟では実際にはありえない、という指摘部分に我が意を得た思い。win-wi…

佐々淳行「菊の御紋章と火炎ビン―「ひめゆりの塔」「伊勢神宮」が燃えた「昭和50年」」

組織の中の異能という自己描写がマサルさんを思い出させる感じ。組織、大変ですね。組織のひとじゃなくてしみじみよかった。ちょっとかっこよすぎじゃない?と思いつつおもしろく読みました。表紙写真がすごいんですよね。なんでこの角度で写真撮れてるので…

判例タイムズ1289号 民事裁判と当事者意識

座談会「当事者は民事裁判に何を求めるのか? 上」 よかったです。弁護士の実感と合致してます。和解のお上手でない裁判官には、当事者の心理を知るためにぜひ読んでいただきたく。

北川達夫、平田オリザ「ニッポンには対話がない―学びとコミュニケーションの再生」

対話を通じて変わっていく余地を持ちながら相互にコミュニケーションすることの価値を表現しています。また、ありのままで在れという観念を疑い、演じることの意義を説いている部分も大事なところです。両者の発言内容そのものを超えて、中間に立ち現れる、…

家庭裁判月報第61巻第4号 妻の潜在的稼働力、相続人廃除

・大阪高裁平成20年10月8日決定 婚費算定にあたり、無職の妻について潜在的稼働能力を考慮すべきという主張を排斥した高裁決定です(この点は原審も同じ)。 「潜在的な稼働能力を判断するには、母親の就労歴や健康状態、子の年齢やその健康状態など諸…

阿修羅フィギュアは完売なんですね。このフィギュア、手指の欠損まで再現されてることと、合掌の両手がつながれておらず(もともと一体のものとして作ったり、貼ってしまえば楽そうなものを)、上手く合わされていること(実物も、この両手の合わせ方がすご…

西岡常一、西岡常一棟梁の遺徳を語り継ぐ会「宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み」

宮大工ものその6。あと残してるのあるかなあ? 前半は、日経の「私の履歴書」が収録されていて、今まで出てなかったエピソードもありよかったです。後半は、あまりに神格化しすぎててかえって上っ面な感じになっているのがちょっとです。

内田春菊、よしもとばなな「女ですもの」

空港の書店で購入。独自なライフスタイル、たいへん結構なんですが、私たちは違う!あなたがたの「普通」はおかしい!とそんなにも声高に主張しなくちゃいけないほど、「普通」から迫害されるものなのかなあ?と前から疑問なんです(この本に限らず。迫害さ…

小川三夫、塩野米松「不揃いの木を組む」

宮大工ものその5。「天地人」の「人」まで読んでると、この人の語る自画像と下から見る像に微妙にズレがあることがわかりつつ、それでもなお、そのようなズレがあるという現実も含めて、仕事論、組織論として参考になります。法律事務所をめぐるさまざまの…

弁護士三四郎「ネゴ・スキル」

うーん、どうしてこんなアメリカンな書き方なのでしょう? 想定場面も台詞も現実ばなれしすぎてピンときません。内容は「ハーバード流」など読んでいれば同じことなので、どうせアメリカ風味を我慢しつつ読むなら、亜流でなく本場ものを読んでた方がマシだろ…

ケース研究298号 家裁の内在的論理

・西澤哲「子ども虐待 虐待による心理的影響とそのケア、虐待傾向を示す親の理解とケア」 ・東京家庭裁判所「母の再婚と面接交渉 養子となった子と実父のケース」 ・沼上潔「医務室からみた家事事件」 ・藤川朋子「人事訴訟における調査官調査の実情」 「内…

これはおみやげの阿修羅。私も見に行きたいです。

お礼&おひろめです^^

判例タイムズ1287号 相当程度の可能性

永野圧彦、伊藤孝至「「相当程度の可能性」に関する一考察 分析と展望」 参考文献、判例一覧が整理されています。この問題を考えるときの出発点として。