弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2010-01-01から1年間の記事一覧

佐藤可士和「佐藤可士和の超整理術」「佐藤可士和のクリエイティブシンキング」

先に読んだひとから、弁護士業務に通じるものがあると勧められたので。たしかにそうでした。 弁護士業はそれほどクリエイティブというイメージでないですが、著者の言うクリエイティブも、その言葉からイメージするような、ひらめきで無から有を生み出すとい…

小池昌代「わたしたちはまだ、その場所を知らない」

日経のコラムでアン・リンドバーグのことを書いていたのを読んで、須賀敦子さんみたいな文章?と思ったので新刊の小説を買ってみたのです。でもちょっとピンとこなかった…。なんか松浦理英子の「ナチュラルウーマン」が思い浮かび再読したくなった(思い浮か…

金融法務事情1903号 裁判官の心証

加藤新太郎「金融機関関係訴訟と裁判官の印象・心証」 金融機関の訴訟担当者に向けた巻頭言ですが、その中に、書面の遅れが心証に影響する、「書面の遅れは、相手方の主張が頭に残る時間が長くなる」とあります。 ほんとにそうならどんなにいいかと思います…

小川三夫, 塩野米松「宮大工と歩く奈良の古寺」

斑鳩や西の京の寺のことは読んだことあるネタが多かったけど、室生寺や長弓寺など棟梁の馴染みでない寺では素直に見たままの印象を語ってて、タイトルどおり、ほつほつと一緒に見て回っている感じで特によかった。

林芙美子「下駄で歩いた巴里」

4月からつらつら読んでいたんだけど、この中の「文学・旅・その他」が特に良くて何度も読みかえして、なかなか読了ということにならなかった。最近はまってた須賀敦子のような整った美しい文章も好きだけど、やはりこうした勢いのある無頼な文章にぐっとき…

P・F.ドラッカー「マネジメント- 基本と原則 [エッセンシャル版]」

なかなか骨がある読みあじでしたが読んでよかったです。 私のようにひとりでやってる弁護士の仕事には直接役に立つわけではないかもしれませんが、自分自身は一匹狼でも、仕事していく上で関わりになる組織はいくらでもあるわけで、組織を見る視点が啓かれる…

塩野七生「日本人へ 国家と歴史篇」「日本人へ リーダー篇」

これまでこの人のことは、ある必要(あることについての負の感情をどうなだめても消せずにもてあましていた当時、マキャベリのある言葉にピンときて「その話しもっと聞かせて!」って感じで語録を買って必死で読んだのです。その結果、その負の感情はキレイ…

金融法務事情1902号 会社分割

・内田博久「倒産状態において行われる会社分割の問題点」東京地裁破産・再生部にいた裁判官による分析。 ・黒木和彰・川口珠青「濫用的会社分割をめぐる問題点」 ・福岡地裁平成21年11月27日判決 新設分割について詐害行為否認を認めた判決です。 ・…

沢木耕太郎「イルカと墜落」

このひとのは深夜特急を読んだだけですが、あまり雰囲気が変わってないですね。文明に接してない人々(イゾラド)についてのドキュメンタリーの取材過程での出来事を書いた本で、この本自体もおもしろかったですが、ドキュメンタリーも見たい感じです。この…

山崎将志「残念な人の思考法」

出張先で読むものを探すとどうしてもこれ系になってしまうのがほんとにイヤ(いつも書いてるけど空港の書店はロクな本がなくて許せない!)。こんなふうに残念な人の残念な理由を分析してあるのを読むと、「自分は違うわ」とか思えてそれなりによい気分にな…

「HUBBLE ハッブル宇宙望遠鏡 時空の旅」

ブラッドベリで喚起されたSF心がこれで満たされました。とってもよかったです。なにかSFを読みたいとも思っていたけど、ライトノベル風味にあたったときのガッカリ感を想像しただけで手が伸びないのです。あまり詳しくない分野だけに、売れてるのに手を…

判例タイムズ1323号 弁護士会照会への回答拒否

東京地裁平成21年7月27日判決 郵便事業者の回答拒否について不法行為を否定した裁判例です。それはともかく、解説では弁護士会照会(23条照会)への回答義務を認めた裁判例がいくつか挙げられていますが、大阪高裁平成19年1月30日判決が落ちてま…

レイ・ブラッドベリ「永遠の夢」

「どこかで楽隊が奏でている」の方は、ネフの造形とか男の夢ですねって感じで何とも思わなかった。「2099年の巨鯨」は神話すぎてよくわからず。 なんてことを書いておいて何ですが、訳者あとがきが何でこんなにブラッドベリに対して上から目線なんだろう。も…

伊坂幸太郎「バイバイ、ブラックバード」

伊坂の近刊は何冊も続けてピンとこなかったのでこれもどうしようかと思いましたが、太宰の「グッドバイ」が下敷きとあれば読まないわけにいかない・・。で、今回はよかったです。表面的にライトなおもしろさと、深読みできるほのめかし。ピンとこなかった近…

須賀敦子の…

私は普段は作家論とかこういうファン本みたいのは読まないことにしてるんだけど、はまった勢いで。「ミラノ」の中で、「ガッティはアツコのことが好きで、それが顔に出てしまうために、惚れているということが気の毒なほどわかってしまったという。」という…

須賀敦子全集

書店でたまたま平積みになっていて、全集が出ているほどの人なのに名前も知らないとは不思議だな、というだけの理由で1巻をなんとなく買って、そうしたらもうはまった状態となって一息に、しかし味わいつつ読みました。書簡の巻はあえて読まないでいるので…

金融法務事情1899号 ヴァーチャル口座

三井住友銀行法務部長三上徹「バーチャル口座に対する差押命令」 ヴァーチャル口座とは、振込専用で実体のない口座です。よく花の名前がついていますね。債務者の口座としてヴァーチャル口座しかわからない場合に、口座をどう特定するかという問題があります…

園尾隆司監修、杉山初江著「民事執行における子の引渡し」

著者はいわゆる法律家ではなく、執行官室事務局員という立場で、仕事のかたわら通った慶応大学法学部の卒業論文がもとになったのが本書です。横浜地裁管内での執行の実例が多数紹介されるとともに、理論的にもこの分野の全体像がまとめられていて、子をめぐ…

サイモン・シン「暗号解読」「代替医療のトリック」

「フェルマーの最終定理」にひきつづき「暗号解読」はとってもおもしろかったです。私たちがこうやってインターネットをしているのも暗号のおかげなわけです。 ただ、「代替医療」は、これまでのとは違って…。「フェルマー」や「暗号」は、天才が努力の末や…

村上春樹「1Q84 BOOK3」

発売日に読んでたんですが、あまり感想が出なかったので書くの忘れていた。 今週か先週の東洋経済だったかにマサルさんが、醜いとされる牛河は背が低くずんぐりして頭が大きくギョロ目という描写でそれは筆者にも当てはまる、というようなことを書いていて、…

片岡武、管野眞一「家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務」

「家庭裁判所における」というコンセプトからやむをえないものの、遺言執行者とコンフリとか弁護士が書くなら当然言及するようなことが触れられていなかったりもしますが、裁判所周りのことがらについてはとっても行き届いた本で、これからこの分野のことで…

金融法務事情1897号 財団債権性

伊藤真「財団債権(共益債権)の地位再考 代位弁済に基づく財団債権性(共益債権性)の承継可能性(大阪地判平21.9.4を契機として)」 典型的・日常的には労働者健康福祉機構が給料債権を立て替え払いする場面で問題となり、財団債権性の承継を否定し…

佐々淳行「わが記者会見のノウハウ」

いつもの調子で、自慢まじりの佐々節。書かれているノウハウは当たり前のことなんだけどなぜみな失敗してしまうのか。おもしろく読めました。

判例時報2069号 賃貸借を設定する財産分与

名古屋高裁平成21年5月28日判決 扶養的財産分与として妻に自宅の賃借権を認めた判決です。

金融法務事情1895号「座談会 法務セクションの果たす役割の変化と今後求められる人材」

銀行の法務部やインハウス、外部弁護士についてなど。自分にはあまり関係ないけどとても興味深い内容でした。ロー生とかは是非にも読むべき記事だと思います。

内藤あいさ「デキる弁護士、ダメな弁護士」

軟派なみかけの本なので出先で気楽に読み始めたら、最初の弘中先生のインタビューでうわーっとなって、持って帰って執務室の机で読むことにした本です。著明な弁護士について何となく知ってるつもりでも、どんな仕事をしてきてどんな考え方でとかまで思って…

加藤恭子, 田島恭二「昭和天皇と美智子妃その危機に―「田島道治日記」を読む」

美智子妃に関する記述は後半のごく一部なので、全体の内容に照らすともっと適切なタイトルがありえたように思うけど、こういう方が売れるとふんだのでしょうか。戦後、天皇の戦争責任とか退位論とかの皇室の危機がいかに乗り越えられてきたか、その陰でどの…

サイモン・シン「フェルマーの最終定理」

パラッと見て数式がいろいろ書いてあったのでこれは無理と投げ出してあったのを、先に読んだひとが熱烈に勧めてくるので読んだら、数式のことは深く考えなくても大丈夫、読めました。とってもおもしろかったです。

武田百合子「富士日記」

10年くらい前から気になっていた富士日記をようやく読めました。わりと好きでした。こういうのが読みたかった。 思うに、世の中の女性エッセイって、「ひとりで外食できない私」とか「たまに奮発しようと思ってもつい慎ましくしてしまう私」とかのこぢんま…

水木悦子、手塚るみ子、赤塚りえ「ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘」

家にあったので。3人ともに特に思い入れがないのでふーん、という感じでしたが、まあまあおもしろかったです。父の絵柄と娘の顔つきに共通性があるのがとっても不思議。