弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2010-01-01から1年間の記事一覧

堀川惠子「死刑の基準―「永山裁判」が遺したもの」

「仕事がらここに書いてあるようなことは知ってるのかもしれないけど・・」なんて言いつつ置いていかれて、じつはあまり惹かれなかったんだけどせっかくだからと読んでみたら、たいへんよかったです。仕事がらだってこんなこと知らないよ! 硬い方向(法曹と…

上原善広「日本の路地を旅する」

日本各地の被差別部落を旅した本です。これは何とも言えない・・旅している空気感だけという感じで、インタビューはいきなり行ってたまたま話せたかどうかというだけなので、読んだ印象も漠然としか・・。

伊坂幸太郎「オー!ファーザー」

[asin:4104596043:image:small] 毎日更新してるとヒマ人と思われるなどとよけいな心配もしますが、私は読むのが早いため新書のたぐいや味わうまでもないと思った小説などは心ない早さで就寝前のひとときに1冊読んでしまうので、そうヒマにすごしているわけ…

判例タイムズ1316号 交通事故算定基準

中西茂(東京地方裁判所判事)「ブックレビュー 大阪地裁民事交通訴訟研究会編著「大阪地裁における交通損害賠償の算定基準」」 大阪地裁の交通部がつくった本についての東京地裁の交通部部長によるブックレビューなわけで、被レビュー文献とあわせて要チェ…

江國香織「真昼なのに昏い部屋」

「意思が弱かったり自分の感情を自覚できない人が流れに流されて不合理なことをするさまや心理を不思議風味に描く」類型の小説は苦手と前に山田詠美の短編集のときに書きましたが、これもそんな感じ。読了後に新聞広告の煽り文句をみて微妙な気持ちになった…

東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会「弁護士専門研修講座 倒産法の実務」

運用の違いに東京はそうなんだ〜と驚くこともありますが、地方でも参考になります。どうも、破産申立代理人による従業員の解雇については、従来言われていることと異なり、一律に解雇ありきで考えない方向になってきているようです。私も、代理人が解雇して…

竹内政明「名文どろぼう」

家にあったので。文章術の本かと思ったけど名文を織り込んだエッセイという感じ。文章術ものには「悪文」でちょっと懲りていたため読むつもりはなかったのですが、最初の方で、「働く」とはハタ(周囲)を楽にすることという陳腐な説教をされたときの切り返…

壇一雄「壇流クッキング」

ライトな読みものを求めて今度はこっち方面。壇一雄が自殺しないで長らえたのは料理をしてたからだ(食のよろこびというか生命力というか)みたいなことを前に誰かが書いていたと思うんだけど、それがうなずける感じ。料理法として取り入れられそうな要素は…

姫野カオルコ「リアル・シンデレラ」

「誰もが知っている「シンデレラ」の物語。その物語をテーマに文章を書こうとしていた私が紹介された一人の人物――倉島泉。複数の関係者から話を聞いた私は、彼女に興味を持つ。多くの証言から浮かび上がってきた彼女の人生とは? 本当の幸福を知りたい人に贈…

沢木耕太郎「深夜特急」

自分に酔った男調の文章ではないかとばかり思ってこれまで読まずにいましたが、そうではないと教えてもらって読んでみたら本当にそうではなかったので意外。自分はこういうことしたいと思わないし、したいような人と親密になることもないだろうと思うけど、…

吉田篤弘「それからはスープのことばかり考えて暮らした」

頭休めになるライトな本をと思って買ってきたなかのひとつ。うん・・・こういうのだろうと思っていたけど、やっぱりこういうのだった。なんというか、いまどきの若手の作家の人の字が大きめの小説って、こういうモラトリアムな感じというか、ゆるい感じのば…

桐野夏生「ナニカアル」

このごろのほかの本ほどにすごく好きとまではならなかったですが、よかったです。林芙美子と斉藤の関係が、「IN」のタマキと青司の関係みたいで、男のこういうダメでダメでダメなところを告発調でなく被害者ぽくなくまざまざと書いてくれるのがいい。斉藤…

小林正啓「こんな日弁連に誰がした?」

猪野先生ブログの記事を見たひとがさっそく買って一気読みして感心してたので私も続けて一気読み。おもしろかったです。個人的には、このごろ読んでた戦争ものに通じる何か(理念先行で現実を見ずに敗れ去る・・)を感じました。猪野先生の書かれているとお…

家庭裁判月報第62巻第2号 養子縁組

佐賀家裁平成21年8月14日審判 神職の世襲を目的とする養子縁組について、未成年者(10歳)の将来をかなり制約する可能性が生じること、ひきつづき実父母のもとで養育されることが期待されることなどから、許可しなかった審判です。へーそういうものな…

判例タイムズ1313号 刑事裁判

門野博「刑事裁判ノート 裁判員制度への架け橋として(7)」 「名古屋高裁編(手続)」ということで、保釈など手続面の裁判例の紹介とコメントなど。保釈について「保釈保証金で担保できるものは、でき得る限り保釈を認めようと腹をくくりました。」という…

判例タイムズ1312号 平成21年3月最判

民法判例レビュー 麻酔薬投与の過誤と患者の死亡との間の因果関係 最判平成21年3月27日 加藤新太郎

半藤一利,保阪正康,松本健一,竹内修司「占領下日本」

知った同士のうちあわせなしのパネルディスカッションを見ている感じの気楽な座談で、ほんとかなと思うときもありますが、この時代のことはあまり読んだことがなくよく知らないので、まずはおもしろく読めました。 次はさらに時代を続けて「The Coldest Wint…

アーシュラ・K・ル=グウィン「ラウィーニア」

ゲド戦記の人の新作ということで。西のはての年代記3部作よりさらに地味で枯れた味わい。もいちど味わって読もうと決めて最初はパッパと読んでしまい、さて再読をと思いつつあまりに枯れすぎてて私もよほど枯れた気持ちにならないと取りかかれない。解説に…

岩淵悦太郎「悪文」、中村明「悪文―裏返し文章読本」

なんでこれらを読もうと思ったんだろう・・どこかで紹介してあったからなんだろうけど忘れた。閉じこめられ中に持参してたのでどっちもちゃんと読みましたが、そりゃそうだと思うことしか書いてなかった。文章術ものにときどき手を出してしまいますが、今後…

与謝野馨「民主党が日本経済を破壊する」

「経済財政戦記」で与謝野氏善玉説にやられてしまったので、ついこんなのも東京の行き帰りに読んでみました。

ジョン・トーランド「大日本帝国の興亡」

2.26事件から敗戦までの歴史をたどったもの。この・・何とも魅力のない表紙、外国人が書いた日本の歴史ってどんなんだ・・ハヤカワってことは架空歴史ものかなにか?という感じで、知の巨人が勧めてなければ絶対に手に取らなかったと思います。でもとって…

保阪正康,井上亮,半藤一利「「東京裁判」を読む」

今村均から戦犯つながりで。東京裁判の書証など新発見資料をもとにしたという本。裁判資料の抜粋や解説と鼎談であっさり読めます。 ちなみにいまは知の巨人おすすめの「大日本帝国の興亡」全5巻(超おもしろい)を読み中なのですが、「東京裁判を読む」でエ…

角田房子「責任 ラバウルの将軍今村均」

これは知の巨人おすすめだったかしら。よかったです。 「玉砕くずれ」のエピソードがなんとも後味悪い…。補給も絶たれた孤島なら死守を命じられれば玉砕しかなくても、歩いて帰れるとこに楽天地があるのに玉砕、できないよね…。 これまで周りで、親族がシベ…

被害考

・被害者であると自覚する人が、加害の重さ(悪質さ)を強調したいがために、被害の重さ(自分がいかに痛めつけられたか)を強調する行動に出ることがよくあります。 ・それはそれで了解できる心理だからべつにいいんですが、離婚事件で、加害行為自体が証明…

女性弁護士考2

・「女性弁護士考1」 身の回りで微妙に反響のあった記事に、ある方とのやりとりで深めた内容を、ちょっと寝かせて、もうひとこと。 ・言いたかったことをかみくだくと…、「嫌われないで誰からも好かれたい」のまま無意識に生きて仕事してると無難な「お嬢さ…

大変だ考

・自分にとって未知の課題に挑むにあたり、人から「大変だよ」とか言われるとなんかイラっとするときがあります。思うに、イラッとさせるふうに「大変だよ」と言ってくる人には二系統あって、自分はその大変さをあまり知らないくせに人が「大変だ」と言って…