弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

保坂和志「読書実録」

・読書実録。読書と実録、読書の実録、読書は実録

・たしかとはどういうことか? それはまったくたしかではないそれをたしかと思うことだ。(「カンバセイション・ピース」!)

・原因と結果はワンセット。

・本当になる前にはっきり解読できているとしても驚かなければならないのはそこではない、本当になった現実の方こそ驚かなければならない。

・その冒険から自分は二度と戻ってはこない、なぜならこのプリミティヴィズムの水のなかで泳いだあとでそこから出るときには知的にも精神的にも元のものと同一人物であるはずはないと思われたのだから(ここから「急に具合が悪くなる」をどうしても思い出して、最初から最後までもいちど読んだ。→「この先不確定に動く自分のどんな人生であれば引き受けられるのか、どんな自分なら許せるのか」「選ぶときには自分という存在は確定していない。選ぶことで自分を見出すのです。選ぶとは、「それはあなたが決めたことだから」ではなく、「選び、決めたこと」の先で「自分」という存在が生まれてくる、そんな行為だと言えるでしょう。」。その出来事の後では自分の同一性がなくなってしまう出来事…。そして勢いで「未明の闘争」も読み始めてみたけどこちらは中断)

・回帰するショック

・過去を振り返るときの時間の遠近感のなさ、過去の遠ざからなさ

・人生とはあれもできるこれもできるという可能性の束でなく、こうとしか生きられなかった(→テッド・チャン「商人と錬金術師の門」)

言語化・言葉の力への関心がどんどん薄れて可能性の束、枝分れする宇宙になった

・文字によるあらたまった思考は、知らずに体内に巣食う、そのうちに宿主を乗っ取る地球外生物のようなものだ、権力とはそれのことだ。(→神林「我語りて世界あり」)

・書き写しをしているとかつて読んだ文が活性化するのだ、ただ目と頭だけで読むのより書き写しをする方が文が文を喚び起こす、記憶のどこかに仕舞い込まれていた文が新しい力を得て、出たくてうずうずする

書き写しまでしなくても保坂読んでると、このかつて読んだ文の活性化がつぎつぎ起こって脳内のイメージが収拾つかなくなる、喚起されたイメージを握りきれずほどけ散っていくこの感覚をなんと呼べばよいのだろう。ちょっと前から本読んでて線とか引いちゃう人になってたんだけど、「読書実録」中からは触発された考えのメモまで書くようになってしまった。それにしても、保坂公式ツイッターの文体がわたしにはあまりにもムリで、作品群もちょっとキライになるくらいに。猫を…猫をあんな感じで好き好きする男の人がどうしてわたしはこんなにあれなんだろう。どうしてといって、そのわけは自分でわかってるのだけど、原因と結果の因果はわかっていつつ、どうしてこんなにもそのムリさがつよいのか、そのつよさがつよすぎて疑問。 

読書実録 急に具合が悪くなる 未明の闘争(上) (講談社文庫) 未明の闘争(下) (講談社文庫)