弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

論究ジュリスト24号 現行民訴法20年

・垣内秀介「民事訴訟の審理をめぐる問題状況」

集中証拠調べ、集中審理、計画審理

・武藤貴明「裁判官からみた審理の充実と促進」

・大坪和敏「弁護士からみた審理の充実と促進」

ノン・コミットメントルールには意味がない?

・勅使川原和彦「控訴審・上告審の現状と課題」

続審制の下での事後審的審理に対する評価。一回結審での逆転判決。控訴審運営について裁判所と弁護士の評価が異なること。

続審制の意義を「裁判の正当性の保障の強化」に見るのであれば、第一審で充実した審理が行われた場合であっても、控訴審での審理を縮減できるのは、第一審と同じ結論に至る場合がせいぜいであって、少なくとも反対の結論に至り得るときには、反論・反証の機会を十分に与えなければ、控訴審で充実した審理がなされたという評価にはなり得ないのではないか。」

ドイツでは、裁判所と当事者の認識のギャップを補正する義務は裁判所にあるとされ、我が国でも上告審で原判決破棄の際に口頭弁論必要と解されていることを敷衍して控訴審の逆転判決に「釈明義務違反や法的観点指摘義務違反に問えるという解釈も考えられる余地があろうか。」

上告受理の緩やか化?

判例時報2355号 建物明渡と遺留分と価額弁償、面会交流の間接強制、求人票と労働契約不利益変更

・東京高裁平成28年6月22日判決

受遺者が遺留分権利者の占有する建物の明渡を求めた場面で、価額弁償を条件として建物明渡を認容すべきものとして、請求棄却の原判決を変更した高裁判決です。原審は遺留分侵害→占有者は遺留分減殺で共有持分有する→棄却に対し、原告が価額弁償を条件とした明渡の予備的請求を追加して控訴

・大阪高裁平成29年4月28日決定

15歳の子の面会交流の間接強制申立について、債務者の意思のみによって履行できず履行不能として却下した高裁決定です。原決定は不履行1回につき30万円の間接強制を命じていました。解説部分、抗告審を控訴と書き間違いが何度もあり気になります。

京都地裁平成29年3月30日判決

求人票記載の労働条件により労働契約が成立したものとして、就労開始後の労働条件通知書(原告の署名押印あり)による不利益変更を認めなかった判決です。

ローレン・グロフ「運命と復讐」

オバマが愛読した恋愛小説」と聞いてつい読んでしまった、というような書評に接して私もやっぱりつい読んでしまったのですが、これはほんとに素晴らしかったです。

男と女のありかた、男は単純に信じていれば幸せな生活と女が固く守る秘密と、魅力あり注目を集める者の人生とそうでない者にもそれなりの人生があること、夢と夢やぶれること、若さの中だけの輝きとそれを失ってからも人生は続くこと、挫折と雌伏と才能と栄光、母と子のありかた、子の育ち方が当人に落とす影、才能ある者とそれを支える者の光と影…、いろいろな角度からの味わいを提示する迫力の大長編。軽快な文章の美しさ。筋もすごいし細部も味わいたいしそして文章の美しさ。強く勧めます。

もっとこういうのが読みたい! アーヴィングの長編とか、最近読んでいないので(と書きかけて当ブログを検索したら前回のアーヴィングは2007年で10年以上経ってた…)、また読もうかしら。 

運命と復讐 (新潮クレスト・ブックス)

クリスチャン・ザイデル「女装して、一年間暮らしてみました。」

そんなに友人が離れてったりするものなのかあ。せっかくだからもっと写真とか見てみたいと思ったのですがWEB上にも全然ないのね。

女装して、一年間暮らしてみました。

「弁護士が悩む不動産に関する法律相談」「弁護士が悩む高齢者に関する法律相談」

特に不動産の方、へーそんなことがと思うような事例の紹介が多く、読む価値あります。

そして座談会…、なんか迷走したやりとりも含めナマのまま出しすぎで、もうちょっとキレイにしないのかなあと思う部分も。

でもまあ、「家族」も含めたこれらシリーズ3冊は、中堅以上でだいたいのことはわかってるわいとおもってるような弁護士でも、目を通しておくとよいと思います。だいたいわかってるひとなら時間かからずスイスイ読めるはずです。

実例 弁護士が悩む高齢者に関する法律相談 ―専門弁護士による実践的解決のノウハウ―

実例 弁護士が悩む不動産に関する法律相談 ―専門弁護士による実践的解決のノウハウ―

実例 弁護士が悩む家族に関する法律相談―専門弁護士による実践的解決のノウハウ

判例タイムズ1443号 代襲と特別受益

福岡高裁平成29年5月18日判決

被代襲者の特別受益代襲相続人の特別受益。推定相続人でないときに贈与を受けた者が後に代襲相続人となった場合は特段の事情がない限りその贈与は特別受益には当たらないが、本件では特段の事情あり。

ジュリスト1513号 働き方改革、債権法改正

・座談会「働き方改革と人事管理のこれから」

無期転換、同一労働同一賃金、労働時間規制について実情がわかる座談会です。

・不動産法の最前線「賃借人の債務保証の現代的問題」

特に、債権法改正、根保証規律がかかることについて。