弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

家庭の法と裁判2017年1月号 特別縁故、祭祀承継、婚姻費用

・東京高裁平成27年2月27日決定

被相続人のいとこたち5名に合計9500万円の寄与分を認めた原審につき、いずれについても特別縁故者と認めるに足りる客観的事情の存否や程度をさらに審理すべきと差し戻した高裁決定です。

・大阪家裁平成28年1月22日審判

被相続人のめい・おいである申立人と、交際相手的な存在の相手方とのあいだで被相続人の遺骨の帰属が争われ、遺骨は祭祀財産には該当しないが準用により、相手方に取得させた審判例です。

・東京家裁平成27年8月13日審判

婚費の始期を内容証明による請求時とし、住宅ローンは算定結果から一定額を控除し、就学中の子(21歳、19歳)につき未成熟子として取り扱うものの、学費は算定表以上に加算しない(進学にあたり奨学金の貸与が前提であること、子らのアルバイトが可能であることなど)とした審判例です。

判例タイムズ1430号 寄与分、間接強制

・大阪高裁平成27年10月6日決定

家業の農業従事の寄与分を遺産総額の30%と認めた原審判を変更し、農地のみの評価額の30%とした決定例です。

・大阪家裁平成28年2月1日決定

面会交流の間接強制(1回4万)を認めた決定。子は7歳。子が嫌がったものの、母から子に適切な指導、助言をすることによって履行可能で、面会方法を変更したい場合は別途の調停を検討せよと。

藤田宙靖「裁判と法律学」

蟻川先生が何しゃべってんのかな!という興味だけで手にした本書。しかし対談はもちろんですが本文もエキサイティングでした。

制度準拠的思考、良識、眼差し、平明さ、飾り言葉、裁判と学説、「法は単なる所与ではなく、つねに課題である。」、正義ではなく最も適正な解決、真犯人と無辜ではなく真犯人かどうか、垂直的正義と水平的正義。

裁判と法律学 -- 「最高裁回想録」補遺

加藤新太郎ほか「裁判官が説く民事裁判実務の重要論点 家事・人事編」

本書の位置付け的に当然ですが、基本的で当然のことが書いてあるだけでした。唯一、不貞相手に対する慰謝料の消滅時効の起算点(不貞終了と離婚に時間差がある場合)について妙に厚く書かれています(100~104頁)。

裁判官が説く民事裁判実務の重要論点[家事・人事編]

門口正人ら「訴訟の技能」

門口本2冊。「民事裁判の要領」は連載も読んでたのでまあ特にでしたが、「訴訟の技能」、1ページ1行目から「裁判は、闘争である。」とか、中村節がたまらない。まずはすべて信じてみる、おおらかに、ピンチのときほど楽しむ。などなど。たしかに私も先日は主観的にすごくピンチだったのですが過ぎてみれば何てことなかった数日間があり、あのときも楽しめば楽しめたはずだなあと今は思っているのです。

訴訟の技能――会社訴訟・知財訴訟の現場から

民事裁判の要領―裁判官の視点から