弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2016-01-01から1年間の記事一覧

鈴木大介「脳が壊れた」

観察力筆力+出来事の希有な出会い。書評やamazonレビューにあるとおりで付け加えることはないんだけどとにかく読むべしです。

岸見一郎「幸せになる勇気」

ちょっと必要があってとある人の著作を続けて読み込んでるんだけど、それでつくづく思うのは、書いてる本人が怒って書いてる文章は読み手を引き込むより逆に気持ちを冷まさせるだけだっていうこと。準備書面とか、そうなりがちのことがどうしてもたびたびあ…

南和行「僕たちのカラフルな毎日」

LGBTの講演などで親不孝と言われるというエピソードがあったけど、そのあたりがきっと一番きびしいギャップなんだろう。というのは、自らが子持ちゾーンに入ってみてはじめてわかる孫パワーというのがあると私は思っていて、私は人間関係に恵まれていた…

家庭の法と裁判2016年6月号 面会交流、フィリピン連れ子養子、ハーグ条約

・大阪家裁平成27年3月13日審判 平成26年最判のケースの続きなのですが、法律上の父が求めた子との面会交流を却下した審判です。 ・名古屋家裁豊橋支部平成26年7月17日審判 日本国籍男性とその妻(フィリピン国籍)が妻の連れ子(フィリピン国籍…

ケース研究326号 ハーグ条約

「東京家庭裁判所における子の返還に関する事件の審理について」 「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)に基づく子の返還に関する各国裁判例の紹介~DVと重大な危険に関する各国裁判例について~」

判例タイムズ1424号 子の引渡、養育費と大学学費、婚費と住宅ローン

・「執行事件についての一考察 担保権実行としての不動産競売事件と子の引渡し執行事件について」 ・大阪高裁平成27年4月22日決定 大学に進学した子の養育費について、国立大学の学費と通学費から標準算定方式で考慮済みの学費を控除し、その3分の1を…

判例時報2291号 面会交流、心裡留保・錯誤(不本意であるが真意)

・福岡高裁平成28年1月20日判決 面会交流不実施について元妻と代理人の責任を認めた原判決を取り消し、元夫の請求を棄却した高裁判決です。 ・さいたま地裁平成27年11月27日判決 減給への同意について、心裡留保、錯誤を否定した裁判例です。解説…

「本林塾講演録 新時代を切り拓く弁護士」

どの方のお話しもよかったです。 「優れた弁護士になるためには、優れた弁護士になりたいと強く思って行動すること」そのことよ。 そして、「宇宙の一員」「人類の歴史が目の前で焦点を結ぶ」とか…、加藤良夫先生のご本もそうですが、つきつめて仕事をしてゆ…

伊東秀子「父の遺言 戦争は人間を狂気にする」

秀子先生からご恵贈いただきました。貴重な記録と思います。

奥野修司「ねじれた絆 赤ちゃん取り違え事件の17年」

取り違え事件自体のショッキングさとは別に、一方の家庭の内情がこれまたすごくて、これ、よく世に出せたなあと思います。血を分けた親子であることの不思議さ、育てる日々の蓄積から生まれるもの、などなど…。

判例タイムズ1423号 遺言・介護事故・特別養子・寄与・子の引き渡し

・「遺言能力(遺言能力の理論的検討及びその判断・審理方法)」遺言能力をめぐる事案は増えていますね。・「介護事故による損害賠償請求訴訟の裁判例概観 過失・安全配慮義務違反の判断を中心として」裁判例の概観だけで分析まではないですが、相談場面でも…

判例時報2288号 面会交流と間接強制

大阪高裁平成24年3月29日決定面会を拒む10歳児との面会につき間接強制を命じた原決定(判時のタイトルには「判決」とありますが決定ですね)を取り消して申立を却下した高裁決定です。この決定より後に最高裁平成25年3月28日決定(これも解説は…

金融法務事情2042号 所有権留保

「倒産実務における自動車の(第三者)所有権留保に係る問題点の整理と今後の課題についての一考察」平成22年最判、平成27年名古屋地裁、軽自動車、登録自動車。大阪の運用。

かとうよしお「だれもほめてくれない だから じぶんでほめる」

とある会議のあとに加藤良夫先生から出版のご案内をいただき即購入いたしました。加藤先生が詩集を?!と一瞬驚きつつも、たしかあれは平成8年最判の上告理由書だったでしょうか、とても独創的で説得力のある表現をとられていたことなど思い出しつつ、法的…

NBL1073号 カトシン新連載

読者が「これは知らなかった」という事項を毎回入れることがベストではあるがセカンドベストとして「知ってはいたが、別の意味もあることを知る」「知っていたことが当然ではないことを知る」というあたりを志向、とのこと。やはりモノローグよりも座談で弾…

調停時報193号

調停時報…存在は知りつつノーマークだったのですが、けっこうためになる内容で情報量も多いじゃないですか! ケース研究以上と思いました。民事の方も載っているし、失敗例の連載はあ~なるほどね~と感じ入りました。これは部外者は買えないのかな。ケース…

二弁フロンティア2016年6月号 インターネット消費者問題

「インターネット消費者問題の法律実務の基礎と最新動向」

アナイス・ボルディエ「他人のふたご」

年若い乙女である当事者たちが書いてるのでブログみたいな読後感。ネットニュースあたりでサラっと読んでヘエ~と思うくらいな…ひとの人生の一大事についてこんなふうに批評みたいことするの悪い感じもしますが、それが本にするってことの意味なので…(とナ…

齋藤孝「こども孫子の兵法」

たまには、の育児もの。ネタ的に買ってみたこれですが、意外とヒットしました。見開きの右に載っている原文を親のあとから音読させ、解説はただ読んでやります。なにやらグッとくるらしくて4回も5回も続けて読まされるページがあります。園児も園児なりに…

判例時報2286号 認知無効

東京高裁平成26年12月24日判決 認知者の両親が血縁関係のない被認知者についての認知無効確認を求めた訴えを却下した原審を取り消し差し戻した高裁判決です。解説によれば原判決は「素朴な感情」によるもので、高裁判決は当然だそうです。

論究ジュリスト2016年春号 憲法

座談会 日本の立憲主義のいま 「いざという時」、個人の尊厳の義務的とらえかた、「権利それ自体が義務」、グローバルの要請と復古主義の抱き合わせ、「情念の動員」、90年代のやり直し、選挙とデモ、パトスとエトス、自己犠牲を軸とした新自由主義と保守…

金融法務事情2040号 23条照会

「座談会 地域金融機関における弁護士会照会制度の現状と課題」 どうやれば何がどこまで出てくるか、流動性があるので常におさえておくのが大事。 「金融判例研究会報告 共同相続人の1人に対する預金払戻しの拒否と銀行の不法行為責任」 鳥取地裁平成28年…

植本一子「かなわない」

褒めてる書評を見て読んでみたのだけど…ありかたとしては別にいいんですが作品としてすぐれているとかは特に思えず。

湯澤剛「ある日突然40億円の借金を背負う」

事業を投げ出すのは簡単だし割り切ればそんなに怖いことでもないのだけれど、よくぞ投げ出さず乗り切ったですね! 好事魔多し、警告としての出来事の受け止めなどなど。「Never Never Never Give Up」「主体的に生きること、それが道を拓く」

庄野潤三「自分の羽根」

第一章に作品としての文章があって、第二章以下で素に近い文章が並ぶと、作品としての文章は素に見えて作り込まれているとわかります。題材も文章もいかにも自然体に見えてそうではないことのすごさ! 「どうせ大したことは見も、感じも出来るわけではないと…

佐藤伸行「世界最強の女帝メルケルの謎」

「待つことの天才」、「脱政治」、「できるだけ長期間、さまざまな選択肢を保つスタミナ」「時とは恵みのしたたり」「結末をイメージしてからプロセスに入る」「マキャベリストでプラグマティスト」 「ビジョン(幻覚)を見る者は病院に行け」これはメルケル…

井戸まさえ「無戸籍の日本人」

見上げた活動ですごいなあと感心し胸をうたれながら読みました。

星野博美「みんな彗星を見ていた」

一読圧倒される…とちょっと前にも別の本について書いたけど、なんかもう形容しがたい、すごい本でした。読者の目線に近いところから始まったかのようで多数の文献書簡を渉猟してとんでもない歴史のふかみに連れて行ってくれる! でもそれも書かれた歴史のか…

月刊選挙2016年4月号 政治家のリーダーシップ

「被災地選挙の諸相 情報処理と震災復興」 2015年仙台市市民意識調査をもとに、被災者自認、生活水準と情報処理水準のクロス分析、陰謀論的なものの見方とのクロス分析と、政治家のリーダーシップについて。政治家はいい人であろうとするとあいまいな情…

判例時報2284号 産科

山口地裁平成27年7月8日判決 産後児死亡事案で吸引+鉗子+クリステレルの過失(適応なし)を認めた裁判例です。平成23年発生。分娩経過についての被告主張+カルテ記載の信用性が否定されています。