弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2016-01-01から1年間の記事一覧

家庭の法と裁判2016年5月号 離婚紛争と子の利益

・村瀬嘉代子さんの巻頭言がこのうえなくやさしいです。特集記事、ディスカッションとも良。 ・仙台高裁平成26年11月28日決定 管轄外裁判所に申し立てられた調停の自庁処理をせず移送する決定について、自庁処理されるべきものであって裁量権の範囲を…

判例タイムズ1421号 訴訟上の和解、面会交流

・最高裁平成27年11月30日判決 これの上告審。破棄されるべくしての破棄と思いました。血迷ったような高裁判決でしたね。 ・東京高裁平成25年9月26日決定 面会交流審判を審理不尽として差し戻した高裁決定です。解説での参考判例、文献紹介も含め…

判例タイムズ1420号 事故調査報告書と文書提出命令、親権者変更

・松本展幸「事故調査報告書等に対する文書提出命令について(医療事故を中心に)」 ・福岡高裁平成27年1月30日決定 協議離婚時に定めた親権者の変更申立について、事情変更がないとして却下した原審判を取り消して親権者の変更を認めた高裁決定です。…

判例タイムズ1419号 訴訟指揮

須藤典明「高裁から見た民事訴訟の現状と課題 自由平等社会における民事裁判の役割」 特に本人訴訟への対応の部分など。共済年金返還事件は最高裁で破棄されてしまって残念です。

保坂和志「遠い触覚」

読んでぐっときた箇所に折り目をつけたら何十箇所にもなって、主には保坂自身がぐっときた文章や映像について書いてあるんだけど、そのぐっとくる感じ、持っていかれる感じはまさに保坂も私をそうさせるところなので、保坂の文章の思念の固まりがいきなり脳…

米長邦雄「人間における勝負の研究」

自分も勝負師だと思って仕事をしているのでこういう心身の整え方、縁起、などなどすべてを勝負にむけてゆく人生論にひきつけられます。

伊坂幸太郎「サブマリン」

伏線をふくらませてキレイに回収する見事さととぼけた超人の描写と悪意と救われなさとひょっとしたらの救いの気配と。いつもの上手な伊坂。

アンディ・ウィアー「火星の人」

ひさびさにSF欲が。ラノベ風味じゃなくて深遠さがあって気持ちが宇宙に持っていかれる上手なSFがもっと読みたいなあ! これはまあまあよかったけど深遠さ的にはいまいち。

神林長平「だれの息子でもない」

いま、amazonのレビューをそうそうそうだよねと思って見てました。露天風呂で闘う場面が急にコミカルで、私は神林のコミカル系はやはり苦手。いつもの神林なんだけど今回はなぜか慰めがある読後感。

論究ジュリスト2016年冬号 非訟事件

「研究会 非訟事件手続法 事実の調査・証拠調べ・裁判」 179頁からの「裁判官の感覚」の項。実体的真実、弁論主義、裁判官のマインド、10年前に予測したように今がなっていないこと、当事者に任せるほど漂流、ルールメイキング、スポーティングセオリー…

判例時報2281号 清算条項

・最高裁平成27年9月15日判決 特定調停の清算条項について、過払金債権は清算対象としないものと解釈した最判です。判時の解説と、ジュリスト2月号の「最高裁時の判例」の解説が同じ文章ですね。 ・東京高裁平成27年10月15日判決 裁判外の和解の…

判例時報2280号 手技ミス

・大阪高裁平成27年5月29日判決 大腸癌術後大量出血による死亡事案で手技ミスを認めた裁判例です。結果から概括的に推認するスタイルの一例といえるかと。

家庭の法と裁判 2016年4月号 家事事件手続法

「座談会 家事事件手続法施行後3年の現状と今後の展望」 もう10年ほど前に家事調停官の任務を終えて調停の運営からは離れていたのですがこの4月からゴニョゴニョで調停運営を再び自らの当為とする前提で読むといろいろと思うところがあり何度も読み直し…

判例時報2276号 家事調停

篠田省二「家事調停への要望 事実認定と合理的解決案の策定」 家事調停の規範性をもっと高めよという方向の注文です。

判例時報2278号 改姓、遺留分減殺、大学教授セクハラ

・東京高裁平成26年10月2日決定 婚氏続称で15年経過後に婚姻前の氏に改姓する申立を却下した原審判を取り消してこれを認めた高裁決定です。こういうのって担当裁判官によって妙に厳しいときがありますよね! ・仙台高裁平成27年9月16日判決 相続…

ケース研究325号 家事調停

京都家庭裁判所「家事調停技法」 聞き返しの技法とかそういうの。けっこうハイレベルな要求です。 育児書は読んでもここには書かないもののたとえば「子どもが聴いてくれる話し方と子どもが話してくれる聴き方大全」とかそれ系の本を読んで実地で試すと子ど…

金融法務事情2034号 貸金庫

「貸金庫の相続」 事実実験公正証書、遺言書がある場合、雑保管、内容物の相続についてなど。

佐藤留美「凄母 あのワーキングマザーが「折れない」理由」

amazonのレビューがやたら悪かったのでしばらく読むのを見送ってたことを読み終わってから思い返し、私もこれらのトンデモ人間の仲間なのに自覚がなかったなと。 こないだ人としゃべってて思い出したんだけど、私が出産前後にほとんど休業してない(出産前日…

滝口悠生「死んでいない者」

何コレすごい好きと思ったら受賞の言葉を読めば保坂の流れをくむ人ってことなのか。空に浮かぶと川に流れるのところが特に!

本谷有希子「異類婚姻譚」

結婚あるあるのおかしみで読ませて途中に病みが入って最後はブンガクっぽくキレイに昇華、という感じ。

庄野潤三「夕べの雲」

庄野潤三の文章の独特のトリップ感と、保坂和志の文章の概念が直接脳に来る感じとは似ているようでちょっと違うのだけど、このたびこれを読んで、描写の脈絡に共通するものを感じた(と書きつつ庄野と保坂でググってみたら、保坂スレで庄野のことを書いてい…

堀江貴文「本音で生きる 一秒も後悔しない強い生き方」

この人ならこう言うよねという予定調和な内容なんですが、こう書くと恥ずかしいような感じもしますがまことにそのことよ同意同意と思ってしまう私です。わかるわかるって読むひとには当たり前の内容だし、わかんないひとには言ってもわかんないよね。

岸見一郎「嫌われる勇気」

堀江本で触れられてたのと、あとここではそういうのも紹介しないんだけど私は実はけっこう育児書も読んでてアドラー派の育児書を続けて読んだものだから、今さらながらで読んでみたのでした。いま書きながらわかったけど続刊がもうすぐ出るのね。

最相葉月「絶対音感」

絶対音感だけならそんなに興味ないのですが、早期教育の功罪みたいなテーマ性があると知って読んでみました。本人の選択以前の早くから教えこまないと開かない扉もあるようだけどそのことの是非だったり、そうでなくても多かれ少なかれ親が決めるひとつひと…

前川修満「会計士は見た」

内容は雑誌のコラムを集めたようなライトさですが、まあなるほどと。

医療の安全に関する研究会「市民が詠んだ医療の安全川柳集」

医療事故情報センターの会議にて名古屋の加藤良夫先生からご恵贈いただきました。医療安全についての川柳集。最後の選評も含めてなるほどなるほどとおもしろく読ませていただきました。ありがとうございます。

神林長平「絞首台の黙示録」

意識と命と科学と神と信仰と父と子と!! 意識は人にのみ属するか環境とともに成り立つのかとか!!! 思わずハアハアしてしまう神林節なのと(フムンは1回)、また思想的には保坂ワールドもあわせて思い出したり(言いたいことは2人とも似てるっぽいのに…

アリアナ・ハフィントン「サード・メトリック しなやかにつかみとる持続可能な成功」

わたしは読んだもののほんとの全てをここに書いているわけではなくてたとえば自己啓発系のも意外と読んでるもののそういうのはあえて書いてなかったりします。で、これもそういう書かない系統とちょっと紙一重なのですが、女性の自伝枠としてあげておきます。…

判例時報2274号 特別縁故者、寄与分、婚姻費用と学費と負債

・東京高裁平成26年1月15日決定 特別縁故者の申立を却下した原審を維持した高裁決定です。身寄りがいない被相続人に法要や庭木の管理などはしていたのですが認められなかったものです。なおこの裁判例、判時は解説ありで原審掲載なし、判タ(1418)…

判例タイムズ1418号 遺産、祭祀、産科

・「東京家庭裁判所家事第5部における遺産分割事件の運用」 東京家裁の運用の解説、統計、当事者への提供書式、他の参考文献の紹介。問題ある代理人のふるまいや代理人に望むことも。 ・「産科医療補償制度の補償金と損害賠償金の調整等について」 制度の説…