弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

単行本

ジェニファー・シニア「子育てのパラドックス 親になることは人生をどう変えるのか」

原題「ALL JOY AND NO FUN」。親が子に与える影響の本は多いが子が親に与える影響の本はそんなにない、と言われるとそうかも。ショッキングでシニカルな統計と、与える愛について。親になればもとの自分ではいられない、それはいかなる意味において? 考える…

堀川惠子「永山則夫 封印された鑑定記録」

あの笑顔の写真の謎、遺品の鑑定書を示すことによって環がつながれたこと。

鹿子裕文「へろへろ 雑誌ヨレヨレと宅老所よりあいの人々」

「本屋に並んでいる雑誌という雑誌を全滅させてやるぐらいの気持ちで作れ!しくじったら腹を切って死ね!腹を切って死んでも平気な顔をしてよみがえれ!そして何事もなかったようにまた雑誌を作れ!」 その意気で。

佐藤信顕「遺体と火葬のほんとうの話」

内容的にへーなのと、単なるおもしろめずらし話ではなくて信念あっての著作なのが感じられて良書でした。よい本と薦められて読んでじっさいよいとそのよさがその人に上塗りされてその人のこともますますよくなるマジカル。

金原ひとみ「アタラクシア」

このごろ読んだのは「夏物語」も「先をゆくもの達」もよかったしこれもよかったなあ。そして思い出すのは、なんだか動揺しての帰り道のあったことを、自分用メモ。 m.huffingtonpost.jp renzaburo.jp

和久田学「学校を変える いじめの科学」

・いじめを深刻化させるキーワード。シンキング・エラーとアンバランス・パワーが揃うと当事者どうしで解決できない。 ・考え方を変える、行動を変える、集団を変える・いじめ対策にも公衆衛生学的手法 ・HAHASO strategy 終章に「学校風土」とかありつつ、…

神田橋條治・白柳直子「精神科医と整体師の技術対話 いのちはモビール 心から身体から」

神田橋先生は、五本指イイコイイコとかなんなんだこの人は?と思ってましたが、本書は心理職ではない対談相手ならではのつっこみが見どころというような書評があったので読んでみました。 ・「と思っていた」が真ん中にくる。「いまにして思えば私は前からそ…

神林長平「先をゆくもの達」「狐と踊れ」

神林長平「先をゆくもの達」読んだ!初神林の「膚の下」いらい「膚の下」みたいなのがずっとずっと読みたかったしかしそれ以上だこれはと興奮しながら。テッドチャンの感じも(信仰と未来視)。視野狭窄っぽい男の一人語りモードがないのがよかった。新作で…

川上未映子「夏物語」「乳と卵」

「乳と卵」をもいちど読んでからおもむろに「夏物語」。ものすごい文学、まさにそうでした。 www.sankei.com book.asahi.com books.bunshun.jp

清田隆之「よかれと思ってやったのに 男たちの失敗学入門」

東畑先生のこのツイートで読んでみた本。 清田隆之「よかれと思ってやったのに」、男性についての身につまされるような強烈な本。ところどころで専門家との対談も入っていて、特に「ハゲ」をめぐる議論のところは、外見というもののもたらす繊細な傷つきにつ…

東畑開人「日本のありふれた心理療法 ローカルな日常臨床のための心理学と医療人類学」

東畑ワールドにはまりました。これは大スペクタクルでもない学術書。 向上心や向学心のもちかた、心理学でいう臨床って弁護士の普通の事件処理か?、それと、研究、発表との両立とかモチベーションの保ちかた、についても、読んで思うところがあり。 弁護士…

江國香織「旅ドロップ」

江國らしいオシャレでルーズで自由な感じのエッセイ集。この人にはやっぱり、ひえたバターをふんだんにたべていてほしくて、スタバ的なカフェに気後れして1人で入れないみたいな自虐系女性作家エッセイみたいなことは書いてほしくなかった(そういうのが1…

東畑開人「野の医者は笑う 心の治療とは何か?」

「居るのはつらいよ」の東畑先生をもっと読んでみようと思いつつ、この「野の医者」は単なる行ってみた試してみた式の軽薄な本かもと先入観があって、より噛みごたえがありそうな「日本のありふれた心理療法」を読み始めたら、どうも先に「野の医者」を読む…

ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

イギリスの元底辺中学校の日常がこんなにもネタの宝庫。ライトな日常エッセイみたいなものかと気軽に読んだらとんでもなかったです。ミクロは焼き鳥の肉でマクロは焼き鳥の串。

西野博之「居場所のちから 生きてるだけですごいんだ」

人権擁護委員だからってことで送られてきてる「人権のひろば」2019年3月号でインタビューが載っててほおっとなったので。敵じゃあない、くらいのスタンスってのは田中康雄先生もよく書かれているような。「場」論は「居るのはつらいよ」も思い出しつつ…

京野哲也ら編著「Q&A若手弁護士からの相談 374 問」

拾い読みで、へー知らなかったがいくつかあったので勢いで通読しました。「チェックポイント」シリーズもそうですが定番の文献の紹介もあるのがよいです。

堂薗幹一郎ら編著「概説改正相続法」

このあいだ他会で改正相続法の講義の依頼があったけど結果としてお断りしてしまったのが申し訳なしですが、私は、講師が講師である必然性がなく単にお勉強の成果を披露するだけの研修、定例で何かやらなきゃいけないし若手に場数を踏ませておくかみたいな研…

春日武彦「緘黙 五百頭病院特命ファイル」

中井先生の深遠さにやられた頭直しに春日の小説に手を出してみました。春日臭すごくて、いい頭直しになりました。

中井久夫「治療文化論 精神医学的再構築の試み」

解説によれば中井先生の「全ての発想が流れ込んだ合流点」という本書。語りはやわらかいのに語られていることの難しさ、わかるようでわからなさを全体として受け止めることによって読後の意識には不可逆的な変容が生じているマジカル。 ・二次的疾病利得と正…

加藤寛+最相葉月「心のケア 阪神・淡路大震災から東北へ」

これも「居るのはつらいよ」で引かれていたのだったか。 震災後半年での緊急出版的な趣の本。 PTSDは6年で7割は回復し、治療を受けても受けなくても同様。受けることで早く回復する。治療を受けても受けなくても回復できない人が3割いる。その要因は…

三浦瑠麗「孤独の意味も、女であることの味わいも」

女性の自伝ならひとまず読んでみるというだけだったのですが…びっくりしました。amazonのレビューに同じようなことがたくさん書いてありますが、なんか嫌いと思っている人でも読んでみたらいいのでは。 (追記↓) headlines.yahoo.co.jp この記事、わ…

片山杜秀「未完のファシズム 「持たざる国」日本の運命」

読めない期にあったときに「必読」と勧められてGWにやっと読んで(改元の読書としてふさわしかった)、そしてやっぱり必読です。第一次世界大戦の教訓として日本が何を得たか、そこからどうして第二次世界大戦につながったか。

江國香織「彼女たちの場合は」

ひたむき(視野がせまい)で謎の自分の感覚で突き進む系のいつもの江國です。

「ろう者のがん闘病体験談」

手話は日本語ではないとか、ろうの方が日本語を読めばわかるというわけではないとは知りませんでした。情報の入力方法が違うことで、ものごとのとらえかた自体が違うというのは説明されてみればなるほどです。

吉田修一「続横道世之介」

愛すべきダメ人間像をあじわう心地よさがあります。

ハンス・ロスリング「ファクトフルネス」

自己啓発系の本みたいに思うかもしれませんがそんなことはなくて、知のためには読んでおくべき本でした。 「悪い」と「良くなっている」は両立する。

東畑開人「居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書」

「大感動のスペクタクル学術書」ってなんのことやらですが本当にそうなのです。 氷の下にクジラがいて、クジラも含めての全体であること。

清水聡「家庭裁判所物語」

仕事として家裁に出入りすることのある人には必ず全員読んでほしい! どうしてこんな地味な装丁で、昔に出た本の復刻版みたいなどうでもいい感じなのでしょう? これはすごい本ですよ。胸をうつ愛と感動の物語が家裁にはあったのです。しかし今は? 掛け軸は…

平野啓一郎「ある男」

ライトで確実におもしろく読めるものを求めてたときに。期待どおりでした。

久保田勇夫「役人道入門 組織人のためのメソッド」

役人でも組織人でもないですが、だからこそのお勉強として。 ・鉄のような厚い面の皮とずぶとさに徹した腹の黒さ! ・ある事項を説明するときにそれに最もふさわしい表現はただ1つ。それぞれの状況において最も適切な文書はただ1つ。作文修行はこの唯一の…