弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

家庭裁判月報第58巻第2号 氏の変更

阪高裁平成17年3月3日決定
氏の変更許可申立却下審判に対する即時抗告事件で、原審を取り消し氏の変更を認めたもの。
中国籍の「B」愛蘭(抗告人)は、日本国籍の「A山」太郎と結婚し、長女蘭をもうけ、日本に帰化して夫の戸籍に入籍し「A山」姓となった。
・その後、長女蘭の親権者を抗告人と定めて協議離婚し、抗告人は「A山」を称して新戸籍を編成。
・抗告人は、長女蘭の中学卒業時に「A山」から「B」に変更許可を申し立て、認容された。ところが、長女が、氏名が「B蘭」ではいかにも中華風となると嫌がり、抗告人は変更許可確定前に申立を取り下げた。
・あらためて、「A山」から「B川」への変更許可を求めたのが本件。
・原審は、「A山」は珍奇難読でない、「B川」の使用実績がない等として「やむを得ない事由」が認められないと申立却下。
・ところで、帰化者は本来、帰化の時点で自由に新たに氏を設定することができるが、抗告人は帰化時に婚姻していたため、新たに氏を設定せず夫の氏を称したとみられる。
…という経緯では、本件は日本人の婚氏続称後の復氏と同視しうるとして「やむを得ない事由」を認め、氏の変更を許可したものです。
まあ、読むと、そりゃそうだろと思いますね。こういう、高裁で取り消す判断を読むたびに、一審の裁判官の顔色を絶対視せず頑張ろうなんて素朴なことを思います。