弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2015-01-01から1年間の記事一覧

判例時報2256号 不貞と人格権侵害

・東京地裁平成27年1月7日判決 妻と別居中の男性が既婚者であることを秘して未婚女性と交際したことにつき、交際期間2年間のうち妻との関係修復後もこれを伏せて交際継続した半年分について人格権侵害として慰謝料100万円+弁護士費用10万円を認め…

NBL1054号 従来型契約と倒産法

パネルディスカッション「従来型契約と倒産法」 賃貸借と破産(倒産解除特約、違約金条項、原状回復、敷金)について。理屈と当事者としての当為をつなげて押さえておくべきことと、倒産法って裁判所が勝手に(という言い方もヘンだけど)運用を変えたりもす…

判例タイムズ1412号 争点整理、親権者変更

・「争点整理の現状と課題 大阪発 より充実した審理を目指して」 ・東京家裁平成26年2月12日審判 母を親権者として協議離婚したあと、未成年者が母の実家に身を寄せ、母と母実家の関係は良好ではない、という状況で父からの親権者変更の申立を認めて親…

判例タイムズ1413号 異議をとどめない承諾

・東京地裁平成26年10月3日判決 債務者の異議をとどめない承諾と抗弁についての判決で中身はどうってことないんですが、平成27年6月1日付でこの論点の最高裁判決が出てて掲載のタイミング悪かったというか、頑張ればフォローできるタイミングだった…

ヴィクトール・E・フランクル「それでも人生にイエスと言う」

5歳児がたいくつして「いいことないかな〜」とブーたれると、「人はいいことのために生きるんじゃなくて、生きた結果としていいことがあるんだよ、フランクルも言ってたよ」と諭したりするんですが、言ったからってわかるわけもなく、逆に5歳にしてそんな…

判例タイムズ1411号 書面による準備手続、医療、枕営業、税理士

・「遠隔地・小規模の支部における書面による準備手続の運用」 ・大阪高裁平成26年3月13日判決 離婚による財産分与の対象財産として、夫が経営する医療法人への夫の母の出資持ち分も考慮し、夫が医師として多額の資産を形成したことに鑑み分与割合を6…

判例時報2255号 歯科、弁護士法人のパワハラ

・東京高裁平成26年9月18日判決 区の実施する後期高齢者医療健康診査による受診当日に後発白内障のレーザー手術を受けて合併症を生じたことにつき、説明義務違反で自己決定権侵害として慰謝料50万円を認めた高裁判決です。請求額は100万円。原審は…

ケース研究323号 遺産分割審判、子の調査、財産分与

・「家事事件手続法の下での遺産分割審判事件等に関する紹介 〜同法施行当初の審判事件の状況を中心に〜」 全体として、そして特に、59頁に「調停は審判の準備手続ではないこと」の項。 ・「家事事件における子の調査の留意点 〜発達心理学の観点から〜」 …

家庭の法と裁判 2015年7月号 監護者指定引渡、面会交流

・福岡家裁平成26年3月14日審判 夫を監護者に指定し、妻から夫に対する子らの引き渡しを命じた審判。妻が精神疾患で子らの世話をできず親族の監護意欲も低く就学時期を迎えた子が就学もできていない、というきわめてシビアなケースです…。 ・京都家裁平…

ヴィクトール・E・フランクル「夜と霧 新版」

どうしてか夏になると振り返りたくなる大戦史、というわけで、いまさらですが初読の「夜と霧」。そして読んでみてようやく、あの本のあの箇所は「夜と霧」のここを踏まえていたのだなと、いろんな本のいろんなことが連なって浮かんで、すべてが繋がってくる…

自由と正義2015年5月号 債権法改正

特集 いよいよ決まった「民法(債権関係)改正」 弁護士実務に即した改正点の解説。

川口有美子「逝かない身体―ALS的日常を生きる」

魂の器である身体を蘭の花のように育てる…生きることの意味の極みがあります。

割田剛雄, 小林隆「皇后美智子さまの御歌(みうた)」

歌と写真と解説でライトにまとまった構成。「岸」の歌が収録されていなかったのが残念。

河野裕子「桜花の記憶 河野裕子エッセイ・コレクション」

kindleにて。アタマが疲れてものが読めない感じが続いていたのですが復調の兆し。

判例時報2251号 手技ミス

前橋地裁平成26年12月26日判決 リンパ節炎でリンパ節生検手術の際、副神経切断を生じさせた手技ミスが認められた裁判例です。適切に手術を実施していれば損傷はともかく切断は起こりえないという医学知見が前提となっていて、手術に関わった医師らの証…

河野裕子「たったこれだけの家族 河野裕子エッセイ・コレクション」

kindleにて。またこういうものを読みたいモードになってきました。

佐伯照道ほか「有利な心証を勝ち取る民事訴訟遂行」

たとえばなんですが、「第5章 訴訟を有利に進めるために」の内容は、項目としては「1 はじめに」と「2 若手弁護士へのメッセージ」の2本建てだけで、「1 はじめに」の本文はたったの6行、「2 若手弁護士へのメッセージ」は、内部の項立てもナシで30…

判例時報1410号 裁量免責、産科医療補償、婚姻費用

・東京高裁平成26年3月5日決定 破産者が悪質商法を行ったことが破産原因であること+詐害目的で資産移転行為があったこと←→破産手続開始決定後に破産管財人に協力して善行を積んだことという事情のもとで、裁量免責を認めた原決定を取り消し、免責不許可…

藤原章生「世界はフラットにもの悲しくて 特派員ノート1992-2014」

紛争地帯に一人で赴くようなたぐいの男性の書く文章は「自分に酔った男調」に決まっている、と私は私にひゃっぺんでも言い聞かせたいのです…。でも、「深夜特急」は違ったしなあ… 特別な光景を目にした意味を表現すべきは文章でも写真でもなく、それによって…

志村ふくみ、 石牟礼道子「遺言: 対談と往復書簡」

若松映輔からの流れで手に取った一冊。 石牟礼:今日は、私、大変バカなことを言っていると思います。 志村 :とんでもない!そのバカな、とおっしゃっていることがすごいんですよ。まともなことだったら、面白くない。なにも、まともなことなんか、誰でもし…

二弁フロンティア2015年5月号 遺留分

湊信明「本当は怖い遺留分」 計算を突き詰めようとすると難しくて周りも意外とわかっていない、遺留分の細かいところについて。

金融法務事情2013号 破産事件の運用状況

佐藤卓「札幌地方裁判所における破産事件の運用状況」 「予納金の額は20万円以上とし(略)、事案に応じ、破産裁判所が定めている。当部では、他庁で行われているような、いわゆる少額管財の運用は行っていない。」とありまして、昔は、予納金20万円の事…

判例時報2248号 親権と後見

大阪家裁平成26年1月10日審判 離婚により親権者となった母が遺言により未成年者後見人を子の祖母(母の母)と指定したケースで、父からの親権者変更申立を認めた審判です。

判例時報2247号 未成年後見の横領と国賠

宮崎地裁平成26年10月15日判決 未成年後見人の横領につき、家事審判官の著しい監督義務違反を認めて国賠を認めた裁判例です。

金融法務事情2015号 管財

中井康之「破産管財人との付き合い方」 金融機関に向けて破産管財人との付き合い方を講演した内容ですが、破産管財人に求められている当為という読み方でも参考になります。

ケース研究322号 離婚慰謝料、離婚と子ども、遺産分割

・神野泰一「離婚訴訟における離婚慰謝料の動向」 慰謝料について実質的な争いがあった判決203件を裁判官が分析した論文です。慰謝料事由ごとに(不貞、暴力、粗暴な言動、精神的圧迫、悪意の遺棄、経済的事情、子との交流阻害、性的不調和)、事実認定の…

NBL1045号 債権法改正

潮見佳男「売買・請負の担保責任 契約不適合構成を介した債務不履行責任への統合・一元化」 要綱を眺めるだけでは分からない、理論的な転換点がよくわかります。

家庭の法と裁判 2015年1月号

・福岡高裁平成26年6月30日決定 養育費の減額請求で事情変更を認めなかった原審判を変更し、減額を認めた決定です。養育費月額20万円と定めた調停成立後1年2ヶ月で再婚及び養子縁組をし3年後に子をもうけた、という事情を前提に、原審判は、予期し…

NBL1044号 ネット情報削除

鼎談「検索結果削除の仮処分決定のとらえ方と企業を含むネット情報の削除実務」(筑波大学准教授石井夏生利、弁護士神田知宏、弁護士森亮二) とっても情報量が多い鼎談です。理論的な分析とともに、この分野のノウハウが惜しげもなく語られていて必読と思い…

判例時報2245号 自殺物件

大阪高裁平成26年9月18日判決 自殺物件の賃貸借で賃貸人に不法行為責任が認められた裁判例なのですが、賃貸人は某弁護士会所属の弁護士であると事実摘示されています(そして本人訴訟)。弁護士であることをあえて摘示しなくてはいけないような事実関係…