弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2019-01-01から1年間の記事一覧

神林長平「先をゆくもの達」「狐と踊れ」

神林長平「先をゆくもの達」読んだ!初神林の「膚の下」いらい「膚の下」みたいなのがずっとずっと読みたかったしかしそれ以上だこれはと興奮しながら。テッドチャンの感じも(信仰と未来視)。視野狭窄っぽい男の一人語りモードがないのがよかった。新作で…

川上未映子「夏物語」「乳と卵」

「乳と卵」をもいちど読んでからおもむろに「夏物語」。ものすごい文学、まさにそうでした。 www.sankei.com book.asahi.com books.bunshun.jp

清田隆之「よかれと思ってやったのに 男たちの失敗学入門」

東畑先生のこのツイートで読んでみた本。 清田隆之「よかれと思ってやったのに」、男性についての身につまされるような強烈な本。ところどころで専門家との対談も入っていて、特に「ハゲ」をめぐる議論のところは、外見というもののもたらす繊細な傷つきにつ…

判例時報2413・2414合併号 DV支援措置への慰謝料

・名古屋高裁平成31年1月31日判決 元妻が住民基本台帳事務における支援措置の申出を行い元夫が住民票をとれないようにして転居して面会交流を妨害したとして、元夫が元妻と県に慰謝料請求をして、一審が妻が面会交流を阻止する目的で要件なく支援措置を…

調停時報203号

・面会交流の考え方の歴史的変遷と面会交流調停の現在

ジュリスト1536号 遺言執行者

「遺言執行者の権限の明確化 改正法の意義と課題」

金融法務事情2120号 民事執行法改正

民事執行法等の改正の要点 第三者からの情報取得手続 ・登記所から不動産情報(金銭債権債務名義、強制執行不奏功、財産開示前置) ・市町村、年金機関から給与債権情報(養育費など扶養義務または人の生命身体損害賠償請求権の債務名義、強制執行不奏功、財…

家庭の法と裁判21号 成人の養育費

・大阪高裁平成30年6月21日決定 成人した大学生の婚費について、自ら扶養料の請求をすべきとした原審を変更し、15歳以上の未成年の子と同等に取り扱うとした高裁決定です。義務者が大学進学を積極的に支援してきたという事情を認定。

判例タイムズ1461号 子の引渡の間接強制、婚姻破綻

・最高裁平成31年4月26日決定 母から父に対して求めた子の引き渡しの間接強制を権利濫用とした最高裁決定です。原々決定は1日1万円の間接強制、原決定は抗告棄却でした。最高裁での逆転破棄自判。この件、もともとの子の監護者指定事件も公刊されてい…

二弁フロンティア2019年8・9月合併号 成年後見

「成年後見実務の運用と諸問題」 裁判所の杓子定規っぷり。

判例時報2407号 婚姻費用

大阪高裁平成30年7月12日決定 婚姻費用で義務者の特有財産からの果実(賃料、配当等)を収入認定した高裁決定です。

東畑開人「日本のありふれた心理療法 ローカルな日常臨床のための心理学と医療人類学」

東畑ワールドにはまりました。これは大スペクタクルでもない学術書。 向上心や向学心のもちかた、心理学でいう臨床って弁護士の普通の事件処理か?、それと、研究、発表との両立とかモチベーションの保ちかた、についても、読んで思うところがあり。 弁護士…

江國香織「旅ドロップ」

江國らしいオシャレでルーズで自由な感じのエッセイ集。この人にはやっぱり、ひえたバターをふんだんにたべていてほしくて、スタバ的なカフェに気後れして1人で入れないみたいな自虐系女性作家エッセイみたいなことは書いてほしくなかった(そういうのが1…

東畑開人「野の医者は笑う 心の治療とは何か?」

「居るのはつらいよ」の東畑先生をもっと読んでみようと思いつつ、この「野の医者」は単なる行ってみた試してみた式の軽薄な本かもと先入観があって、より噛みごたえがありそうな「日本のありふれた心理療法」を読み始めたら、どうも先に「野の医者」を読む…

ブレイディみかこ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

イギリスの元底辺中学校の日常がこんなにもネタの宝庫。ライトな日常エッセイみたいなものかと気軽に読んだらとんでもなかったです。ミクロは焼き鳥の肉でマクロは焼き鳥の串。

ケース研究335号 DVと面会交流

・「医学的見地からのDV被害者の状況等について」 DVと母子それぞれのPTSDについて。Kita論文を引いて、DV家庭における親子の面会交流は慎重に判断されるべきである、と。 kita論文の全文↓(購入必要) ・「スモールステップの調査について~子ど…

西野博之「居場所のちから 生きてるだけですごいんだ」

人権擁護委員だからってことで送られてきてる「人権のひろば」2019年3月号でインタビューが載っててほおっとなったので。敵じゃあない、くらいのスタンスってのは田中康雄先生もよく書かれているような。「場」論は「居るのはつらいよ」も思い出しつつ…

こころの科学206号 子育て支援と虐待予防

人はこころの奥に隠された小部屋を持ち、足を踏み入れる唯一の人間は子どもである

判例タイムズ1460号 相続預金、移送、セクハラ懲戒解雇、実父の養育費、賃貸保証人

・「預貯金の共同相続に関する幾つかの問題」 ・最高裁平成31年2月12日決定 離婚訴訟の被告が提起した不貞相手への慰謝料請求訴訟について、人訴法8条1項の関連訴訟とした最高裁決定です(地裁に提訴→家裁へ移送)。 ・東京高裁平成31年1月23日…

こころの科学204号 子どもの”困った”感情

定期購読誌をふやした。「こころの科学」。必要があってバックナンバーを読んだらその他連載もよくて直近号も読んでこれは毎号読もうと。著者名読まずに記事読んで、これは!と著者名ふりかえってやはり!と納得とか折ったり線引いたり一人でさわがしい。 20…

京野哲也ら編著「Q&A若手弁護士からの相談 374 問」

拾い読みで、へー知らなかったがいくつかあったので勢いで通読しました。「チェックポイント」シリーズもそうですが定番の文献の紹介もあるのがよいです。

判例時報2403号 物価水準と婚姻費用

東京高裁平成30年4月19日決定 中国在住妻(中国国籍)から日本在住夫(日本国籍)への婚費請求で、物価水準を考慮すべきという夫主張を入れなかった原審判(算定表の枠内で考慮すべき)を変更して日本100:中国70で算定(生活費指数で考慮)するも…

二弁フロンティア2019年7月号 成年後見

「成年後見実務の運用と諸問題」 マニアックめだけど知りたいようなテーマのQ&A。 ・対立親族の本人囲い込みや本人が受診拒否事例での申立 ・死後事務委任契約 ・後見人報酬確保 ・終了後の計算報告の範囲、対象 ・対応困難本人と辞任

堂薗幹一郎ら編著「概説改正相続法」

このあいだ他会で改正相続法の講義の依頼があったけど結果としてお断りしてしまったのが申し訳なしですが、私は、講師が講師である必然性がなく単にお勉強の成果を披露するだけの研修、定例で何かやらなきゃいけないし若手に場数を踏ませておくかみたいな研…

判例時報2402号 医療訴訟における高齢者の死亡慰謝料

「医療訴訟における高齢者が死亡した場合の慰謝料に関する一考察」

春日武彦「緘黙 五百頭病院特命ファイル」

中井先生の深遠さにやられた頭直しに春日の小説に手を出してみました。春日臭すごくて、いい頭直しになりました。

中井久夫「治療文化論 精神医学的再構築の試み」

解説によれば中井先生の「全ての発想が流れ込んだ合流点」という本書。語りはやわらかいのに語られていることの難しさ、わかるようでわからなさを全体として受け止めることによって読後の意識には不可逆的な変容が生じているマジカル。 ・二次的疾病利得と正…

家庭の法と裁判20号 ハーグ、少年、親権者変更

・ハーグ子奪取条約の運用状況と課題 芝池先生ほか。 ・自立状態にある少年たちの特徴から見る処遇目標・良好措置における検討事項 不安定だと将来のことがイメージできない。サーチライトが届かない、小さな提灯しかない。 ・東京高裁平成30年5月29日…

加藤寛+最相葉月「心のケア 阪神・淡路大震災から東北へ」

これも「居るのはつらいよ」で引かれていたのだったか。 震災後半年での緊急出版的な趣の本。 PTSDは6年で7割は回復し、治療を受けても受けなくても同様。受けることで早く回復する。治療を受けても受けなくても回復できない人が3割いる。その要因は…

判例タイムズ1459号 医師の職務限定合意、養育費減額、共同経営と労働者性、胃がん結果通知遅れ、施設入所

・広島高裁平成31年1月10日決定 消化器外科部長を解任して新設のがん治療サポート副センター長に任命する配転命令について、雇用契約上の義務がないことの仮地位仮処分を認めた(認めなかった原決定を変更)高裁決定です。経緯を読むとおもしろいです。…