弁護士ラベンダー読書日記

札幌弁護士会所属・弁護士田端綾子(ラベンダー法律事務所)の読書日記

2020-01-01から1年間の記事一覧

鎌田東二×南直哉「死と生 恐山至高対談」

・死者はリアル。思い通りになるものがヴァーチャルで思い通りにならないものがリアル ・死体と遺体が失われたときに死者を立ち上げるやり方の一つが葬儀まあこのへんはいつもの発言… ・私(A)が私(A)であるということは、そのように自分の記憶が連続し…

シモン・ストーレンハーグ「ザ・ループ」「フロム・ザ・フラッド」「エレクトリック・ステイト」

ロボット好き男子といっしょに単に、画集として眺めていたのを、ようやく通読。 背後にはもはや、安全な日常生活なんかなく、戻るべき正常なゾーンもなく、出る道は前進しかない。(エレクトリック・ステイト) わたしたちのやってることは文明的じゃない、…

春日武彦「援助者必携 はじめての精神科 第3版」

全面書き直し!の第3版。第2版の帯の背「超実践的アドバイス集(ちょっと毒入り)」が、第3版では「口は悪いが役に立つ超実践的アドバイス集」となってて、そのとおり第3版は毒ひかえめに感じます。口調がですますになった以上のやさしさ感。春日先生ま…

医療判例解説85号 相当程度の可能性、鑑定と判決、因果関係否定

・東京地裁令和元年9月12日判決 ポリペク前の抗凝固薬休薬期間が不適切で脳梗塞、有責、相当程度の可能性900万円。相当程度の可能性にしてそれなりに高額(解説によれば高裁では相当減額した和解)。カンファレンス鑑定3名の無責結論を採らなかった地…

曽野綾子「私日記10 人生すべて道半ば」

さすがにあんまりお元気でなくなっているけどシニカルさは健在。朱門さん亡くなって気落ちされているように見受けられるのに、ご本人はその因果関係の自覚ないみたい。人は自分のことが一番見えないもの…。 そして朱門さんのベッドサイドにあったへそくりで…

河野貴代美「わたしを生きる知恵」

森瑤子に半年の?カウンセリングをされた方(「叫ぶ私」「夜ごとの揺り籠、舟、あるいは戦場」参照のこと)。

新井素子「ひとめあなたに…」

終末ものってことで、20年以上ぶりの再読。わあこの語り口、無理、と最初は思ったけど慣れればなんとか…。それにしても、若い…

大沢在昌「帰去来」

大沢在昌けっこう好き。雑誌連載でばかり読んでるのでここで書いたことはなかった。今回、kindle化を待ちつつなりそうにないものを一気に買って読み散らかしててその一環。パラレルワールド警察小説っていうすごいジャンル設定。落ちこぼれ女性刑事が異世界…

チャールズDレイクⅡ「社外取締役の兵法 グッドガバナンスの実践」

あとがきにもあるように、これは小論文集…おかたい教科書です。 持ち合わせる知見のみに頼らず、勉強、鍛錬、準備、そしてその時々で最善の戦いを。「徳」と「覚悟」とともに。

犬山紙子「すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある」、エスター・ペレル「不倫と結婚」

・人が不倫のなかに発見する最も魅惑的なものは、新しい相手ではなく、新しい自分自身である ・お互いが関係をよくしようと思い、口に出した瞬間から2人はよい方向に転がり出す。その先にあるのは「互いに生きているだけで喜びを与えあえる」という人生の大…

橘木俊詔、迫田さやか「離婚の経済学 愛と別れの論理」、亀山早苗「人はなぜ不倫をするのか」

・結婚は判断力の欠如、離婚は忍耐力の欠如、再婚は記憶力の欠如

家庭の法と裁判25号 改正相続法、内縁と財産分与、合意の婚姻費用と事情変更、遺産分割

・「改正相続法「配偶者居住権」の実務からみた問題点」 消滅時の税務注意! ・「弁護士から見た遺産分割・遺留分と税務」 ・「改正相続法施行後の状況 遺産分割前の預貯金払戻しに関わる金融実務」 ・福岡高裁平成30年11月19日決定 内縁の財産分与で…

判例タイムズ1469号 面会交流と要件事実論、不本意であるが真意

・「面会交流事件と要件事実論に関する一考察」 面会交流の要件事実…吉川さんがそんなこと書くの?!と驚きましたが、そうではなく納得の、要件事実「論」でした。面会交流の要件事実についてではなく、面会交流事件を要件事実で論じることの是非について。 …

村上龍「MISSING 失われているもの」

精神的な強靱さはそれ自体、本来的には不健康であって、かつ、そのようになった背景には痛ましい体験や環境が、必ず、ある、しかもその来歴を自分が強靱な精神でもって自分に隠しているので、自覚ないまま生きている、精神的に強靱である本人は、その強靱さ…

林真理子「綴る女 評伝宮尾登美子」

さかのぼると私が宮尾登美子読んでたの14年前。14年前…。梯久美子「狂うひと 『死の棘』の妻・島尾ミホ」みたいな発見や掘り下げまでは期待できないのですが、宮尾ワールドのファンとしては楽しく読めました。

江國香織「去年の雪」

庄野潤三を読んでるときのようなトリップ感。 この世にすべては並行して進行し存在するのだと、思います。

NBL1166号 新型コロナウイルス

「特集 新型コロナウイルス 現下の課題と法務の取組み」 「従業員の労務管理等Q&A」

二弁フロンティア2020年4月号 労働法

「労働契約法20条に関わる近時の裁判例の動向と分析及び今後の労契法20条の解釈論の方向性」

ケース研究337号 面会交流

「試行的面会交流の適切な活用の在り方」 熊本家裁からの報告。「それを単なる幸運な事情とするのではなく、それぞれの事案において解決に役立つ事情は全て利用するという心構えと、諦めない気持ちが大切である」

ジュリスト1542号 相続法改正

「座談会 これからの相続法」

白石一文「君がいないと小説は書けない」

週刊新潮の連載小説で、ああいうのが叙述トリックというのかな、急にSFっぽくなった感じもうまいなあと思ったので新刊を読んでみました。想が発するままに流れゆく、こだわりオジサンのごにゃごにゃ語り、ちょっと保坂っぽいんじゃないでしょうか。ネコも…

エリザベス・F・ハウエル「心の解離構造」

お勉強として、何日もかけて線引きながらゴリゴリ読みました。いままで読んできた助走(←ここにはほとんど書いてませんけど)があったからか、これだけの分厚さの本書ならではか、これまで以上にこの問題についてわかった感あり。何のことやらまったく理解で…

宇野千代「生きて行く私」

何十年ぶりに再読、のはずがいまいちおぼえてなくて新鮮に、とんでもない行動をドライな文章で。かっこいい!

金融法務事情2132号 民事執行法改正

「さんまエクスプレス第三者からの情報取得手続の運用イメージ」 書式など

秋津じゅん「再び話せなくなるまえに」

・「あるべき自己」が、「私らしい私」をねじ伏せて行動をコントロールする日々を当たり前だと思いきれなくなったときが来た。私の描いたものは「幻」だったのか。それは、一片の波に崩され、跡かたもなく消え去り、無に帰してしまった。 ←リハビリのしかた…

判例時報2429号 債務不履行で弁護士費用

大阪地裁平成31年3月26日判決 旅行会社の募集型企画旅行契約が交通規制で目的を達せず途中帰国となり、現地の通行止めの調査を怠ったとして求めた代金相当額、慰謝料、弁護士費用の支払いが認められた裁判例。債務不履行での弁護士費用は、安全配慮義務…

テッド・チャン「息吹」

だいぶ前に読んでたのに書くの忘れてた。 冒頭の「商人と錬金術師の門」が一番かなあ。以下の抜き書きも、そこからばかり。 ・悔悛と償いが過去を消し去る。未来もまた同じ ・行動の結果を引き受けて生きなければならない ・偶然も故意も、一枚のつづれ織り…

上岡陽江、大嶋栄子「その後の不自由」大嶋栄子「嵐のあとを生きるひとたち」「生き延びるためのアディクション」

・必要なのは不死身の身体ではなく、自分を支える技術と、弱さを媒介とした応援団とのつながり。・「性格的な弱さから嗜癖問題に逃避したどうしようもない自分」という物語を、「自分には逆境を跳ね返す力があり、嗜癖問題からの回復という責任を果たそうと…

田中美津「明日は生きてないかもしれない…という自由」

病むときには病むが良き候 自分一人で行う敗者復活戦

宮野真生子、磯野真穂「急に具合が悪くなる」

つねに不確定に時間が流れているなかで、誰かと出会ってしまうことの意味、そのおそろしさ、もちろん、そこから逃げることも出来る。なぜ、逃げないのか、そのなかで何を得てしまうのか 分岐ルートのいずれかを選ぶとは、一本の道を選ぶことではなく、新しく…